楽器店やネット通販でギターを探していると、「ガットギター」と「クラシックギター」という2つの言葉に出会います。
見た目はそっくりなのに名前が違うため、「何が違うの?」と混乱してしまう初心者の方は少なくありません。
この記事では、名称の由来からアコギ(アコースティックギター)との決定的な違いまでを具体的に解説します。
それぞれの特徴を正しく知ることで、自分が弾きたい曲にぴったりの1本を迷わず選べるようになります。
ガットギターとクラシックギターは基本的に同じ
「ガットギターを買いに行ったら、店員さんにクラシックギターを勧められた」という話はよく耳にします。
結論から言うと、この2つは現代において同じ楽器を指していることがほとんどです。
呼び方の違いは、歴史の流れや弦の素材の変化によって生まれたものに過ぎません。
まずは、なぜ2つの名前が共存しているのか、その理由を紐解いてすっきり整理しましょう。
呼び方が違うだけで楽器の構造は共通
基本的には、どちらの名前で呼んでも同じナイロン弦のギターを指しています。
ボディの形や指板の広さ、ヘッドの形状など、楽器としての作りは全く一緒です。
クラシック音楽を弾く人はクラシックギターと呼び、ボサノバやジャズを弾く人はガットギターと呼ぶ傾向があります。
自分のやりたいジャンルに合わせて呼び方を選んで構いませんが、物自体は同じだと考えて大丈夫です。
歴史的には羊の腸を弦に使っていた
「ガット」とは、英語で「腸(gut)」を意味する言葉です。
大昔のギターには、羊や牛の腸を細く引き伸ばして乾燥させた「ガット弦」が張られていました。
このガット弦を張ったギターのことを呼んでいた名残が、今の「ガットギター」という名称です。
現代では腸を素材にすることは稀ですが、その独特の柔らかい響きを愛する人々の間で呼び名が残りました。
現代ではナイロン弦を張るのが一般的
1940年代にデュポン社という化学メーカーがナイロンを開発し、ギター弦の歴史は一変しました。
天然素材のガットよりも丈夫で扱いやすいナイロン弦が登場し、瞬く間に世界中へ広まったのです。
現在、楽器店で売られているガットギターには、100%と言っていいほどナイロン製の弦が張られています。
名前は「ガット」でも中身は「ナイロン」であることが、今のギター界の標準です。
ガットギター(クラシック)とアコギの大きな違い
一番の悩みどころは、キラキラした音のアコギ(フォークギター)と、どちらを選ぶべきかという点です。
どちらも「アコースティック(生音)」なギターですが、その中身は驚くほど違います。
特に「指の痛み」や「音の大きさ」に関わる部分は、これからの上達スピードを左右する大切なポイント。
失敗しないために、素材や構造の具体的な差をしっかり押さえておきましょう。
弦の素材が金属かナイロンかで見分ける
最大の違いは、弦が「鉄(スチール)」か「ナイロン」かという点にあります。
アコギは金属の弦を張っているため、触ると硬く、弾いた時にジャラーンと鋭い音が鳴ります。
一方でガットギターは釣り糸のようなナイロン製で、触り心地がとても柔らかいです。
指にかかる負担が圧倒的に少ないため、初心者が指を痛めにくいのはガットギターの方です。
ネックの太さと指板の平らさが生む差
左手で握るネックの太さも、弾き心地を大きく分ける要素です。
一般的なアコギのネック幅は約43mmですが、ガットギターは約50mmから52mmとかなり幅広に作られています。
弦と弦の間隔が広いため、隣の弦を間違えて押さえてしまうミスを防ぎやすいのがメリットです。
その代わり、手が極端に小さい人にとっては、指を大きく開く必要があるため少し苦労するかもしれません。
弦をブリッジに固定する仕組みのポイント
ボディの表面で弦を留めている「ブリッジ」という部品にも注目してみましょう。
アコギは「ブリッジピン」という黒い杭のような部品で弦を穴に押し込んで固定します。
対してガットギターは、ブリッジに開いた穴に弦を通し、ぐるぐると結びつける方式です。
この固定方法の違いが、弦の振動の伝わり方を変え、独特な音のキャラクターを生み出しています。
どちらを選ぶ?音色の特徴と向いている曲
「どんな曲を弾きたいか」が、ギター選びの最終的な決め手になります。
ガットギターとアコギでは、得意とする音楽のジャンルが正反対と言ってもいいほど異なります。
自分が憧れているギタリストや、よく聴く音楽をイメージしながら読み進めてください。
それぞれの音が持つ「性格」を理解すれば、どちらを買うべきか自然と答えが見えてくるはずです。
柔らかく温かい音がするナイロン弦の魅力
ガットギターの音は、ポロンと丸みがあり、優しく包み込むような温かさが特徴です。
クラシックの名曲はもちろん、ブラジルのボサノバや、落ち着いた雰囲気の映画音楽によく合います。
落ち着いて1人でポツポツと爪弾くには最高の音色と言えます。
深夜に部屋で弾いても音が響きすぎないため、近所迷惑を気にせず練習したい人にも向いています。
ジャカジャカ弾くのに向いたスチール弦の響き
アコギは金属弦特有のパーカッシブで明るい、元気な音が鳴り響きます。
J-POPの弾き語りや、フォークソング、ロックのストローク演奏には欠かせない楽器です。
屋外やストリートで演奏しても遠くまで音が届く、力強さを持っています。
みんなで盛り上がる曲を弾きたい、力強く歌いたいという方にはアコギが第一候補になるでしょう。
ソロギターならクラシックギターも有力な選択肢
メロディと伴奏を1人で同時に演奏する「ソロギター」にも、ガットギターは適しています。
弦の間隔が広いため、指1本ずつの動きが独立しやすく、複雑なメロディラインも綺麗に響かせることが可能です。
最近では、米津玄師さんなどのポップスをガットギターでカバーする奏者も増えています。
歌を歌わずにギター1本で音楽を完結させたいなら、ガットギターの表現力は大きな武器になります。
見た目ですぐにわかるギターの種類と見分け方
楽器店へ行った時、一目でどちらのギターか判別できれば、迷うことなく目当ての1本へ歩み寄れます。
ラベルを見なくても、デザインの一部を確認するだけで誰でも簡単に識別できるポイントがあります。
「スロッテッドヘッド」や「ピックガード」といった、特徴的なパーツの名前を覚えておきましょう。
これを知っているだけで、初心者でもギターの目利きができるようになります。
糸巻きが横を向いているスロッテッドヘッド
ギターの先端(ヘッド)を見て、弦を巻き取る軸がどこを向いているか確認してください。
ヘッドに2つの溝が開いていて、糸巻きの軸が横を向いているのがガットギターの標準的な形です。
これを「スロッテッドヘッド」と呼び、ガットギターのクラシカルな雰囲気を象徴しています。
アコギの多くはヘッドが板状で、軸が正面を向いている「ソリッドヘッド」なので見分けは簡単です。
ボディのサイズと厚みによるシルエットの差
ガットギターは、アコギに比べてボディが少し小ぶりで、全体的に丸みを帯びた形をしています。
アコギ(特にドレッドノート型)は肩の部分が張っていて、抱えた時に「大きい」と感じることが多いです。
小柄な方や女性にとって、ガットギターのコンパクトなサイズ感は大きなメリットになります。
また、ボディの厚みもわずかに薄いモデルが多く、腕を回して抱え込みやすいのが特徴です。
ピックガードが付いているかどうかを確認
ボディの表面に、傷を防ぐための「ピックガード」という板が貼ってあるかどうかを見てみましょう。
ガットギターは指の爪で弾くのが基本なので、通常はこのガードが付いていません。
対してアコギはピックを使って激しく弾くことが多いため、黒やべっ甲色のガードが貼られています。
ボディ表面に何も貼られておらず、美しい木目がそのまま見えているのがガットギターの証です。
弾き心地に直結する設計と構造のポイント
ギターを構えた時の違和感や、指の疲れやすさは、目に見えないスペックに隠されています。
特にネックの設計は、コードを押さえられるようになるまでの期間に大きく影響する部分です。
単なる「好み」で片付けられない、物理的な設計の差を具体的に見ていきましょう。
これらの数値を知っておくことで、自分にとっての「弾きやすいギター」の基準が明確になります。
ナット幅50mmが生む指の動かしやすさ
ナット幅とは、ネックの先端(0フレット)付近の横幅のことです。
ガットギターはここが50mmから52mmほどあり、アコギより約1cmも広い設計になっています。
「幅が広いと大変そう」と思われがちですが、実は弦同士が離れているため、指同士がぶつかりにくいのです。
特に不慣れなうちは、指を立てて押さえるスペースが十分にあるガットギターの方がミスを減らせます。
弦の張りの強さと指にかかる負担の目安
弦を弾くために必要な力(テンション)は、ナイロン弦の方が圧倒的に弱いです。
アコギの半分程度の力で弦が沈むため、指先が赤くなったり、皮が剥けたりする痛みを最小限に抑えられます。
アコギで挫折した人が「ガットギターなら弾けた」というケースが多いのは、この張りの弱さが理由です。
握力に自信がない方や、お子さんがギターを始める場合でも、ガットギターなら安心してスタートできます。
フレットの数とハイポジションでの演奏スタイル
指板の上にある金属の仕切り(フレット)の数も、アコギとは少し異なります。
ガットギターはボディとネックが12フレットの位置で繋がっているのが伝統的なスタイルです。
アコギは14フレットで繋がっているものが多く、高い音を出すにはアコギの方が有利な面もあります。
しかし、ガットギターは1音ずつの響きを大切にするため、ハイポジションでも音が痩せにくい設計になっています。
メンテナンスと弦交換の具体的なルール
ギターを手にしたら、避けて通れないのが「メンテナンス」と「弦の交換」です。
ガットギターはアコギとは全く異なる作法があり、ここを間違えると楽器を傷める原因になります。
特にナイロン弦特有の「伸びる性質」には、初めて触る人は驚くかもしれません。
長く愛用するための具体的な管理方法を学び、常に良いコンディションで演奏を楽しみましょう。
ブリッジに弦を結んで固定する独特な方法
ガットギターの弦交換は、ブリッジにある穴に弦をくぐらせ、自分自身で結び目を作る作業から始まります。
アコギのようにピンを差し込むだけではないため、最初は少しだけコツが必要です。
結び方が甘いと、チューニングをした瞬間に弦がスルッと抜けてしまうこともあります。
特に1弦や2弦のような細い弦は滑りやすいため、3回ほどねじってしっかり固定するのがルールです。
ナイロン弦特有のチューニングの狂いへのコツ
ナイロン弦を新しく張り替えると、最初の数日間は驚くほどチューニングが狂います。
弦がゴムのように伸び続ける性質を持っているためで、不良品ではないので安心してください。
解決策は、張った直後に弦を軽く引っ張って伸ばしてあげることと、毎日こまめに合わせ直すことです。
1週間もすれば弦が安定し、その後はアコギよりも安定した音程を保ってくれるようになります。
湿度の影響を受けやすい木材の管理と注意点
クラシックギターは、アコギ以上にデリケートな木材で作られていることが多いです。
特に乾燥には弱く、冬場に加湿を怠ると、表面の板にひび割れが入ってしまうリスクがあります。
逆に湿気が多すぎるとネックが反ってしまうため、温度20度前後、湿度50%程度を保つのが理想です。
部屋に置くときは直射日光を避け、エアコンの風が直接当たらない場所を選んであげましょう。
クラシックギター以外のナイロン弦ギターの種類
「ナイロン弦のギター=クラシックギター」だけではありません。
最近では、アコギのような感覚で弾けるモデルや、ステージでの演奏に特化したモデルも増えています。
自分のプレイスタイルによっては、伝統的なクラシックギターよりも使いやすい選択肢があるかもしれません。
代表的な3つのバリエーションを知って、ギター選びの幅をさらに広げてみましょう。
激しいリズムに適したフラメンコギター
スペインのフラメンコ音楽で使われるギターで、見た目はクラシックギターとほぼ同じです。
しかし、激しいリズムでボディを叩くために「ゴルペ板」という保護板が貼られています。
音色はクラシックギターよりも鋭く、立ち上がりの早い、乾いた音が特徴です。
キレのある速弾きや、パーカッシブな叩き奏法に挑戦したいなら、フラメンコギターが最適です。
アコギに近い感覚で弾けるエレガット
「エレガット」は、マイク(ピックアップ)を内蔵したガットギターのことです。
アンプに繋いで大きな音が出せるため、ライブやバンド演奏で使いたい人に重宝されています。
また、ネックの幅がアコギと同じくらい細く設計されているモデルも多く、アコギからの持ち替えもスムーズ。
現代のポップスやフュージョンなど、幅広いジャンルで活躍する非常に便利な1本です。
手軽に持ち運んで楽しめるミニサイズのガット
通常のギターよりも一回り、二回り小さい「ギタレレ」や「ミニガットギター」も人気です。
弦がナイロンなので押さえる力がほとんど要らず、どこへでも連れて行ける気軽さが魅力。
メインの楽器としてはもちろん、リビングに置いておいて、ふとした時にポロンと鳴らすサブ機としても優秀です。
手が小さくてフルサイズのギターに不安を感じているお子さんや女性の入門用にも選ばれています。
初心者が失敗しないための選び方の目安
いよいよ「よし、買おう!」となった時、どれを選べばいいか迷ってしまうものです。
数千円の激安モデルから数百万円の名器まで、価格の幅が広すぎて基準が見えにくいのが悩み。
長く弾き続けたいなら、安物買いの銭失いにならないための「最低限のライン」を知っておきましょう。
以下の3つのポイントを守れば、初めての1本として満足度の高い買い物ができるはずです。
音の響きが良いトップ板が単板のものを選ぶ
ギターの表面の板(トップ板)は、音が最も響く心臓部です。
板が合板(ベニヤのような重ね板)ではなく、「単板(一枚板)」で作られているものを選んでください。
単板は弾き込むほどに音が豊かに成長していくという素晴らしい特性を持っています。
カタログに「スプルース単板」や「シダー単板」と書かれているかどうかを必ずチェックしましょう。
実際に抱えてみて自分に合うサイズを確認
ネットでの口コミも参考になりますが、最後は自分の体で確かめるのが一番です。
楽器店で椅子に座り、実際に右足を台に乗せたり、ストラップを付けて抱えてみてください。
脇の下が痛くないか、左手の指が無理なくフレットに届くかを確認しましょう。
もし大きく感じたら、少しボディが薄いタイプや、弦長が短い「ショートスケール」のモデルを探してみてください。
予算3万円から5万円のモデルを最初の目標にする
あまりに安すぎるギターは、チューニングが合わなかったり、弦の高さ(弦高)が異常に高かったりします。
せっかくのやる気を削がれないためにも、3万円から5万円前後のクラスを狙ってみましょう。
この価格帯であれば、ヤマハやアリアといった信頼できる国産メーカーの良質なモデルが手に入ります。
メンテナンスもしっかりしているため、上達した後も「いい音だな」と感じながら長く使い続けられます。
まとめ:ガットギターとクラシックギターの違いは?アコギとの差を詳しく解説!
ガットギターとクラシックギターは、呼び方が異なるだけで同じ楽器です。金属弦のアコギとは「音色」「指への負担」「ネックの太さ」が根本から違うため、自分の好みに合わせて選ぶことが大切です。
- ガットギターとクラシックギターは基本的に同じものを指す。
- 金属弦のアコギ(フォークギター)とは、弦の素材が決定的に違う。
- ナイロン弦は柔らかく、指が痛くなりにくいので初心者に優しい。
- ネック幅が広いため、隣の弦を間違えて押さえるミスを防ぎやすい。
- 温かく丸みのある音色が特徴で、夜間の練習にも向いている。
- 見た目はヘッドに穴が開いた「スロッテッドヘッド」で見分ける。
- 最初の1本は、3万円から5万円の「単板トップ」モデルがおすすめ。
まずは楽器店でナイロン弦に触れてみて、その柔らかさと優しい響きを体感することから始めてみませんか。
一音鳴らした瞬間に「これだ!」と感じる音色に出会えたら、それがあなたにとって最高のパートナーになります。
